一般的に皆様は、「漬物」といえば沢庵、梅干し等の野菜を漬けたものを思い浮かべますが、
「漬物」というものは、実はもっと広いものの事をいいます。
「漬物」は加工食品の中で最も古い歴史を持ち、
保存食品として、食塩を利用して漬け込んだものをいいます。
ですから、野菜の他に魚介類、お肉などを食塩で調味、
貯蔵してあるものも、広義には「漬物」になります。
ここで一般的に呼んでいる
「野菜の漬物」を見ていきたいと思います。
日本の漬物の特徴
日本の漬物にはたくさんの特徴があります。
まず第一に、非常に数や種類がたくさんあるということです。
江戸末期から明治に至る間に、各地方その土地の気候風土の特色を生かした名物漬物が誕生したと言われています。
仙台の長ナス漬・栃木の小ナスのカラシ漬・関東のべったら漬や福神漬・静岡のワサビ漬・愛知県の守口漬・京都の千枚漬やしば漬や菜の花漬・和歌山の梅干し・奈良の奈良漬・山陰の赤カブ糠漬・広島の広島菜漬・鹿児島の薩摩ダイコンの山川漬などざっと見ただけでも600種をこす漬物があります。
第二に漬け汁や漬け床の豊富さです。
世界の多くの漬物が酢漬けやワイン漬けといった限られた液体に漬けるものに対して、日本には、醤油・もろみ・米酢・塩だし汁・梅酢・日本酒・焼酎の漬け液の他に、酒粕・みそ・ぬか・麹溜、カラシ・昆布などの外国では見られない固体上の漬け床があります。
そして最後に漬け込む材料の多彩さです。
白菜・カブ・ナス・胡瓜・青菜・瓜・大根・冬瓜・生姜・ごぼう・壬生菜・人参・ワサビ・からし菜・野沢菜・らっきょう広島菜・ミョウガ・蕗など。最近ではメロン・セロリ・かぼちゃなど多くの種類があります。
漬物の歴史
漬物の初見は天平年間(729~749年)の木簡に残されている瓜の塩漬の記録で、その後平安時代の「延喜式」に、酢漬・醤漬・糟漬・にらぎ・須須保利・荏づつみなどが記載されています。
当時の漬物がいかに多彩で本格的であったのかが良くわかります。
またこのことから漬物というものは平安時代までに完成していたことになります。
また室町末期から江戸初期の京坂には「香の物屋」と呼んだ漬物の専門店があり、このころから全国に漬物屋が店をかまえるようになります。
江戸期に入って一段と数と種類を増やし、地方の名物・風味物となって全国の至るところに浸透していきました。
漬物が漬かる仕組み
漬物が“漬かった状態”とは、一般的に漬けた材料に味が浸透し、漬け材料に酸味や風味がついて食べられる状態の事をいいます。
また、漬物の下漬け用として漬けた場合は、脱水がうまく行われ、腐敗のもととなる雑菌などの発生が見られなくなった状態のことをいいます。ではどのようにしてこのような状態が作り出されるのか見ていきます。
正常な植物の細胞では水分やその他の成分が細胞の液胞の中に充満して細胞は膨張し生き生きとしています。これを濃い食塩水に浸漬したり、また食塩をまぶすと、食塩の持つ強い浸透圧のはたらきで、漬け材料は脱水作用が起こり、細胞は縮み生命活動は止まります。
細胞の生命活動がストップすると、細胞内の成分を今までに外に出さなかった細胞膜はその機能を失ってしまい、細胞の中と外の色々な物質が自由に細胞内に出入りするようになります。
このように、漬けた材料に糠の甘味・麹の甘味・カラシの辛味等風味成分が浸み込んでいくためには、まず細胞が死んで、細胞膜の働きがなくならなければなりません。
細胞の働きを短時間のうちに止めさせるには、はじめから食塩の使用量を多くして脱水作用を強め、重石も重量をかけて脱水作用を助けます。
結論
野菜を塩または食塩水で漬け込む。
(細胞の働きを殺し、糠等の調味料が漬かるようにします。)
この過程を「荒押し」と呼びます。
↓
漬けあがった野菜を重石等で脱水します。
(脱水することによって、細菌の繁殖を防ぎます。)
↓
脱水の終わった野菜を漬け液・漬け床に漬けます。
この過程を「本漬け」と呼びます。
↓
漬物の出来あがり。
このように漬物は3段階の過程をへて出来あがります。